Tシャツや上履きへの名前書き、オリジナルのイラスト作成で、ペンがにじんで失敗した経験はありませんか。
布ににじまないペンの選び方の結論は、インクの種類、特に「顔料インク」の布専用ペンを選ぶことです。
この記事を読めば、洗濯に強いペンから細かい文字に最適な極細タイプ、濃い色の布用まで、用途別のおすすめペンが分かります。
にじみを防ぐプロのコツや色落ちさせない方法も解説し、あなたに最適な一本が必ず見つかります。
1. 布にじまないペンを選ぶ前に知っておきたい基本
お気に入りのTシャツや子どもの持ち物に名前を書いたとき、文字がにじんで残念な思いをした経験はありませんか?
布にきれいに描けるかどうかは、ペンの選び方で大きく変わります。
まずは、なぜ布にペンがにじむのか、その根本的な原因と、にじまないペンを選ぶための3つの重要なポイントを詳しく解説します。
1.1 なぜ布にペンがにじむのかその原因
布にペンで書くとにじんでしまう主な原因は、布の構造とインクの性質が引き起こす「毛細管現象」にあります。
布は、細い繊維が縦横に織り込まれてできており、繊維と繊維の間には無数の隙間が存在します。
ペンから出たインクが、この繊維の隙間を伝って意図しない範囲まで染み込み、広がってしまう現象が「にじみ」の正体です。
特に、綿や麻といった天然繊維は吸水性が高いため、インクをぐんぐん吸い上げてしまい、にじみが顕著に現れます。
また、インク自体の粘度が低い(サラサラしている)ほど、繊維の奥まで浸透しやすくなるため、にじみの原因となります。
このにじみを防ぐには、布の特性を理解し、それに適した「布専用のペン」を選ぶことが何よりも大切です。
1.2 にじまない布ペン選びのポイント
にじみを防ぎ、思い通りの作品作りをするためには、ペンの特性を理解して選ぶことが不可欠です。
ここでは、布用ペン選びで失敗しないための3つの重要なポイント「インクの種類」「ペン先の種類と太さ」「洗濯耐性」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.2.1 インクの種類(顔料と染料)
布用ペンのインクには、主に「顔料インク」と「染料インク」の2種類があります。
この2つの違いを理解することが、にじまないペン選びの第一歩です。
それぞれの特徴は正反対で、布への定着方法が全く異なります。
- 顔料(がんりょう)インク
色の粒子が大きく水に溶けない性質を持ちます。インクが繊維に染み込むのではなく、布の表面に色の粒子がしっかりと付着して固まるイメージです。そのため、にじみにくく、書いた線がくっきりと残ります。耐水性や耐光性(光による色褪せへの強さ)にも優れているため、洗濯する衣類への使用に最適です。濃い色の布にもきれいに発色する不透明タイプの製品も多くあります。 - 染料(せんりょう)インク
色の粒子が細かく水に溶ける性質を持ちます。インクが繊維の内部まで染み込んで発色するため、鮮やかでクリアな色合いが特徴です。しかし、繊維に染み込む過程で毛細管現象が起きやすく、顔料インクに比べてにじみやすい傾向があります。布用として販売されている染料ペンは、にじみを抑える工夫がされていますが、素材との相性を見極める必要があります。
一般的な布への書き込みでは、にじみにくさを最優先するなら「顔料インク」のペンを選ぶのが最も確実な方法です。
種類 | 特徴 | にじみにくさ | 耐水性・耐光性 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
顔料インク | 布の表面にインクが固着する | ◎(にじみにくい) | ◎(優れている) | Tシャツ、靴下、持ち物の名前書きなど、洗濯が必要なもの全般 |
染料インク | 布の繊維にインクが染み込む | △(にじみやすい傾向) | △(顔料より劣る傾向) | 発色を活かしたアート作品、ハンカチなど(洗濯頻度が低いもの) |
1.2.2 ペン先の種類と太さ
描きたいデザインによって最適なペン先は異なります。
用途に合わないペン先を選ぶと、線が太すぎたり、逆に細すぎて表現が難しくなったりします。
代表的なペン先の種類と、それぞれに適した用途を理解しておきましょう。
ペン先の種類 | 特徴 | おすすめの用途 |
---|---|---|
極細・細字 | 非常に細い線が描ける。硬めのペン先が多い。 | 子どもの持ち物への名前書き、イラストの細かい線画、文字の縁取り |
中字(丸芯) | 一般的なサインペンのような太さ。オールマイティに使える。 | 少し大きめの文字、イラストの主線、簡単な塗りつぶし |
太字(角芯) | ペン先の角度によって太い線も細い線も描ける。 | 広い面積の塗りつぶし、ポスターやゼッケンのような大きな文字 |
筆(ブラッシュ) | 筆圧によって線の強弱をつけられる。柔らかいペン先。 | カリグラフィー、味のあるイラスト、繊細な表現 |
子どもの体操服や靴下への名前書きには「細字」、Tシャツにイラストを描くなら主線に「中字」、塗りに「太字」といったように、複数の種類を使い分けるのがおすすめです。
また、帆布(キャンバス)のような凹凸のある生地には、インクが出やすく引っかかりにくい丸芯や太字が適しています。
1.2.3 洗濯耐性(耐水性と耐光性)
衣類やバッグなど、繰り返し洗濯したり日光に当たったりするものに使うペンは、「洗濯耐性」が非常に重要です。
洗濯耐性は、水に濡れても落ちない「耐水性」と、紫外線による色褪せを防ぐ「耐光性」の2つの要素で決まります。
布用ペンを選ぶ際は、必ずパッケージを確認し、「洗濯OK」「耐水性」といった表記があるものを選びましょう。
特に顔料インクのペンの多くは、描いた後にアイロンで熱を加えることでインクが布に完全に定着し、格段に洗濯に強くなります。
この「アイロン定着」が必要かどうかも、ペン選びの重要な確認事項です。
せっかくきれいに描けても、一度の洗濯で消えてしまっては意味がありません。
用途に合わせて、必要な耐久性を持つペンかしっかりと見極めましょう。
2. 用途別!布がにじまないペンおすすめ徹底比較
「布ににじまないペン」と一口に言っても、その種類はさまざまです。
Tシャツにイラストを描きたいのか、子どもの持ち物に名前を書きたいのか、それとも本格的な手芸作品を作りたいのか。
あなたの目的によって、最適な一本は異なります。
この章では、具体的な用途ごとにおすすめの布用ペンを、それぞれの特徴や使い方のコツとあわせて詳しくご紹介します。
ぜひ、あなたにぴったりのペンを見つけるための参考にしてください。
2.1 洗濯に強い!Tシャツや普段使いの布におすすめのペン
オリジナルTシャツやエコバッグ、子どものゼッケンなど、頻繁に洗濯する布製品には、洗濯への耐性が最も重要です。
インクが布にしっかりと定着し、色落ちや色移りしにくいペンを選びましょう。
主に「顔料インク」と「染料インク」の2種類があり、それぞれに特徴があります。
2.1.1 顔料系布用ペン|くっきり発色でにじみにくい
顔料インクは、色の粒子が大きく、繊維の表面に付着して色を表現します。
インクが繊維の奥まで染み込みにくいため、にじみが少なく、くっきりとした線が描けるのが最大の特長です。
特に綿やポリエステルなどの一般的な素材との相性が良く、初心者でも扱いやすいでしょう。
多くの製品は、描いた後にアイロンで熱を加えることでインクが定着し、洗濯に強くなります。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
ZIG ファブリカラー ツイン | 呉竹 | ペン先が筆タイプと細字のツインマーカー。色の種類が豊富で、重ね塗りやグラデーションも可能。アイロン定着で洗濯OK。 |
布描きしましょ | マービー(Marvy Uchida) | 手軽に使えるペンタイプ。カラーバリエーションが豊富で、ラメ入りや蛍光色など特殊な色も揃う。こちらもアイロン定着が必要。 |
2.1.2 染料系布用ペン|やわらかな風合いを活かす
染料インクは、色の粒子が細かく、繊維一本一本を染め上げるように色を付けます。
そのため、布本来のやわらかな風合いを損ないにくいのが魅力です。
ただし、顔料系に比べてにじみやすい傾向があるため、描く際には少しコツが必要です。
布によっては、事前に専用の下地剤を塗ることで、にじみを防ぎ、発色を良くすることができます。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
布用染色ペン | – (手芸店オリジナルなど) | 細い線を描くのに特化したペンタイプ。シルクスクリーンやステンシルと併用されることも多い。 |
布えのぐ(ペンタイプではない) | ターナー色彩 | 絵の具タイプだが、その定着性と風合いは特筆もの。水で薄めて筆で描く。アイロン不要で定着し、ごわつきが少ない。 |
2.2 細かい文字やイラストに最適!にじまない極細ペン
持ち物への小さな名前書きや、繊細なイラスト、刺繍の下絵など、細かい作業にはペン先の細さが求められます。
布の繊維にペン先が引っかからず、スムーズに描ける極細タイプのペンを選びましょう。
インクの出が安定していて、一定の細さで描き続けられることが、にじみを防ぐ重要なポイントです。
2.2.1 細かい描写向きのペン
極細タイプの布用ペンは、ペン先が0.5mm以下のものが多く、布の織り目にインクが広がりすぎるのを防ぎます。
特に名前書き用のペンは、洗濯に強く、にじみにくいインクが採用されているため、細かいイラスト用途にも転用できます。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
ZIG ファブリカラー ツイン(細字側) | 呉竹 | ツインタイプの一方が細字(約1mm)になっており、細かい部分の描写や縁取りに便利。 |
ピグマ | サクラクレパス | 本来は紙用のミリペンだが、耐水性の顔料インクを使用しているため布にも使用可能。0.03mmからの豊富なペン先の細さが魅力。洗濯にはやや弱いため、装飾用途向き。 |
布用ボールペン | – (手芸メーカー各社) | チャコペンのように、刺繍の下絵など後で消すことを目的としたものと、定着させるものがある。ボールペンタイプなので、安定した細い線が引きやすい。 |
2.3 濃い色の布にも描ける!発色が良いペン
黒や紺、濃いグレーのTシャツやデニム生地に描きたい場合、通常のペンでは色が沈んでしまい、きれいに発色しません。
このようなシーンでは、下の色をしっかり隠してくれる高い隠蔽性(いんぺいせい)を持つ不透明インクのペンが必須です。
白やパステルカラー、メタリックカラーなどが揃っているかもチェックしましょう。
2.3.1 不透明顔料系のペン
画材として有名な「ポスカ」に代表されるような、不透明の顔料インクを使ったマーカーが最適です。
インクが布の表面をコーティングするように乗るため、濃い色の布地の上でも、インク本来の色が鮮やかに発色します。
こちらもアイロンで熱を加えることで定着し、洗濯強度が増します。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
ポスカ(POSCA) | 三菱鉛筆 | 言わずと知れた不透明マーカーの代表格。白、金、銀などの発色が特に良い。布に描いた後は、裏から当て布をしてアイロンをかけると定着する。 |
ペイントマーカー | ぺんてる | ポスカ同様、隠蔽性の高い不透明インクを使用。油性なので定着力は高いが、素材によってはにじむ可能性や、特有の匂いがあるため換気が必要。 |
2.4 子供も安心!安全性に配慮された布ペン
お子さんが使うお絵かき道具や、肌に直接触れる衣類への名前書きには、安全性が気になりますよね。
インクの成分や、ペンの形状が子供にとって安全に作られているかを確認しましょう。
インクが水性で嫌な匂いが少なく、万が一口に入っても安全な基準をクリアしている製品を選ぶと安心です。
2.4.1 水性で安全性の高いペン
多くの文具メーカーから、子ども向けの安全な布用ペンが販売されています。
特に「APマーク」など、米国の画材・工芸材料協会の定める安全基準に適合した製品は、人体に無害な材料で作られているため、一つの目安になります。
水性インクは油性に比べて匂いが少なく、子どもでも扱いやすいのがメリットです。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
布用マイネーム | サクラクレパス | 名前書きペンの定番「マイネーム」の布専用タイプ。にじみにくく、洗濯にも強い。インクの安全性にも配慮されている。 |
おなまえマーカー | パイロット | こちらも名前書き用の定番商品。速乾性があり、インクがにじみにくい。キャップの誤飲を防ぐための工夫がされている製品もある。 |
2.5 DIYや手芸に!プロも使う本格的な布用ペン
趣味の域を超えて、販売用の作品作りや、よりこだわりのある手芸・DIYに挑戦したい方には、プロ仕様の本格的な布用マーカー(ファブリックマーカー)がおすすめです。
卓越した耐洗濯性、豊富なカラーバリエーション、そして表現の幅を広げる特殊なインクなどが魅力です。
画材店や大きな手芸店で手に入れることができます。
2.5.1 専用の布用マーカー
海外ブランドを中心に、アーティストやデザイナー向けに開発された高品質な製品が存在します。
これらのペンは、色の混色ができたり、水でぼかして水彩画のような表現ができたりと、創造性を刺激する機能が満載です。
定着後の耐久性も非常に高く、作品を長く美しい状態で保つことができます。
商品名 | メーカー | 特徴 |
---|---|---|
セタカラーマーカー | ペベオ(Pebeo/フランス) | 布用絵の具の有名ブランド「セタカラー」のマーカー版。発色が非常に美しく、プロのアーティストにも愛用者が多い。アイロン定着後の洗濯耐性は抜群。 |
テキスタイルマーカー | ヤマト | 日本の老舗メーカーによる布描きマーカー。インクの定着が良く、手軽に使える。蛍光色やメタリック色もラインナップされている。 |
3. 布にじまないペンを使いこなすプロのテクニック
お気に入りの布用ペンを手に入れたら、次はその性能を最大限に引き出すテクニックを身につけましょう。
ほんの少しの手間をかけるだけで、にじみを防ぎ、プロのような美しい仕上がりを実現できます。
ここでは、下準備から描き方のコツ、洗濯方法、そして万が一の失敗時のリカバリー方法まで、作品のクオリティを格段にアップさせるプロの技を詳しく解説します。
3.1 にじみを防ぐ下準備と描き方のコツ
布に描く前の「下準備」が、仕上がりの美しさを大きく左右します。
にじみの多くは、この下準備を省略することで発生します。焦らず、ひとつひとつの工程を丁寧に行いましょう。
3.1.1 布の選択と下処理
ペンと布の相性は非常に重要です。
まずは、描く対象となる布の特性を理解し、最適な下処理を行いましょう。
- 布の選び方: 綿や麻、ポリエステル混紡など、様々な素材がありますが、基本的には織り目が細かく、表面がなめらかな生地ほどインクが広がりにくく、にじみを防げます。Tシャツであれば、薄手のものよりもしっかりとした厚みのヘビーウェイトTシャツなどがおすすめです。
- 水通し: 新品の布には、製造工程で使われた糊(のり)や柔軟剤、コーティング剤が付着していることがあります。これらがインクを弾いたり、にじみの原因になったりするため、描く前に一度洗濯(水通し)をして、しっかりと乾かしておきましょう。これにより、インクが繊維に均一に浸透しやすくなるだけでなく、完成後の洗濯による縮みを防ぐ効果もあります。
- アイロンがけ: 水通しをして乾かした布には、必ずアイロンをかけてシワを完全に伸ばしてください。布の表面が平らになることで、ペン先が引っかからず、スムーズに線を引くことができます。インクのムラを防ぎ、均一な仕上がりにつながります。
3.1.2 下書きの重要性
一発描きは失敗のリスクが高まります。
特に複雑なデザインや文字を描く場合は、必ず下書きをしましょう。
下書きに使う道具によって特徴が異なるため、用途に合わせて選ぶのがポイントです。
種類 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
水で消えるチャコペン | 水や専用の消しペンで簡単に消せるため、修正が容易。手芸店で手軽に入手可能。 | インクが残った状態で水をかけると、インクごと色がにじむ可能性があるので、完全にインクが乾いてから消してください。 |
自然に消えるチャコペン | 数時間から数日で自然に線が消えるタイプ。消す手間が省けます。 | 作業時間が限られます。長時間かかる作品には不向きです。 |
フリクションペン | アイロンの熱で簡単に消えるため便利。手軽に入手できるのも魅力。 | 寒い場所に行くと、消した線が薄く復活することがあります。特に冬場の屋外で着用するものには注意が必要です。 |
鉛筆(HBなど) | 手軽に使えますが、芯の粉が布の繊維に残りやすく、インクと混ざって黒ずみの原因になることがあります。 | ごく薄く描き、描画後は練り消しゴムで優しく叩くようにして粉を取り除きましょう。 |
3.1.3 インクの定着方法
布用ペンの多くは、インクを繊維にしっかりと固着させるための「熱処理」を推奨しています。
この工程を正しく行うことで、洗濯への耐性が格段に向上します。
- 完全に乾燥させる: 描画後、インクが完全に乾くまで自然乾燥させます。製品によりますが、最低でも1時間、できれば24時間程度置くとより確実です。インクが乾く前に熱を加えると、にじみの原因になります。
- アイロンで熱処理: インクが乾いたら、アイロンで熱を加えます。必ず当て布(綿のハンカチなど)をし、スチーム機能はオフにしてください。布の素材に合わせた適切な温度(通常は中温設定)で、15秒〜30秒ほど、均一に圧力をかけながらアイロンを当てます。この熱によってインクの樹脂成分が溶け、繊維に強力に固着します。
- 製品の指示を確認: ペンのパッケージに記載されている推奨温度や時間を必ず確認してください。製品によって最適な定着方法が異なります。
3.2 洗濯しても色落ちさせないお手入れの注意点
心を込めて描いた作品は、できるだけ長く美しい状態を保ちたいものです。
正しいお手入れ方法で、色落ちや色あせを防ぎましょう。
- 最初の洗濯: 熱処理後、すぐに洗濯するのは避けましょう。インクが完全に安定するために、描画後、最低でも24時間以上経過してから洗濯するのが理想です。
- 洗濯方法: 洗濯機を使用する場合は、描いた面を内側にして裏返し、洗濯ネットに入れることで、摩擦による色落ちや毛羽立ちを防げます。可能であれば、優しく手洗いするのが最もおすすめです。
- 洗剤の選択: 漂白剤や蛍光増白剤が含まれている洗剤は、色落ちや変色の原因となります。おしゃれ着洗い用の中性洗剤を使用してください。
- 乾燥方法: 強い紫外線は色あせの原因になります。直射日光を避け、風通しの良い場所で陰干ししましょう。衣類乾燥機の使用は、高温がインクや生地を傷める可能性があるため、避けるか、低温設定で短時間にとどめるのが賢明です。
3.3 失敗した時の対処法と修正術
どんなに注意していても、インクがはみ出したり、間違えたりすることはあります。
しかし、慌てる必要はありません。
完全に消すことは難しい場合が多いですが、目立たなくさせる方法はいくつかあります。
- 乾く前に素早く対処: インクが乾く前であれば、被害を最小限に抑えられる可能性があります。にじんだ部分を、こすらずにティッシュや乾いた布で上から優しく叩き、インクを吸い取ります。水性インクの場合は、その後、水をつけた綿棒などで根気よく叩くと薄くなることがあります。
- 重ね塗りでカバーする: 失敗した部分より一回り大きく、濃い色や不透明なインク(ポスカなど)で上から塗りつぶし、デザインの一部としてカモフラージュする方法です。影を付け加えたり、模様を追加したりと、アイデア次第でリカバリーできます。
- ワッペンや刺繍で隠す: どうしても修正が難しい場合は、その部分を隠してしまうのも一つの手です。アイロンで接着できるワッペン(アップリケ)を貼ったり、上から刺繍を施したりすれば、失敗を隠しつつ、新たなデザインとして作品を生まれ変わらせることができます。
- 薬品の使用は最終手段: 染み抜き剤や除光液、エタノールなどでインクが落ちる場合もありますが、生地の色まで落としてしまったり、インクがさらに広がってしまったりするリスクが非常に高いです。試す場合は、必ず作品の目立たない端切れなどでテストし、自己責任で行ってください。基本的には推奨されない方法です。
4. 布にじまないペンに関するよくある質問
布用ペンを初めて使う方や、いざ使おうと思った時に浮かぶ素朴な疑問にお答えします。
知っておくと、よりスムーズに作業が進められたり、万が一のトラブルにも対処できたりしますので、ぜひ参考にしてください。
4.1 油性ペンは布ににじまない?
「油性ペンなら大丈夫だろう」と、つい手近な油性マーカー(例:マッキーなど)を布に使おうと考える方も多いかもしれません。
しかし、結論から言うと、一般的な油性ペンは布ににじみやすく、使用はおすすめできません。
その理由は、油性ペンに含まれる「有機溶剤」にあります。
この溶剤がインクを液体に保っていますが、布に書くと繊維に沿って溶剤が染み込み、インクの色素まで一緒に広がってしまうのです。
これが「にじみ」の主な原因です。
また、油性ペンは布への使用を想定していないため、以下のようなデメリットもあります。
- 裏移りしやすい:インクが布の裏側まで染み出てしまうことがあります。
- 洗濯で色落ち・色移りする:洗濯耐性が低く、他の衣類に色が移ってしまう可能性があります。
- 生地が硬くなる:インクが固まり、描いた部分がゴワゴワした手触りになることがあります。
一方、「布用」と表記されているペンは、にじみを抑えるためにインクの粒子が大きく作られた顔料インクを使用したり、特殊な成分を配合したりしています。必ず用途に合った布用ペンを選びましょう。
4.2 布に書いたペンを消す方法は?
布用ペンは「消えないこと」を目的として作られているため、一度定着(乾燥やアイロンがけ)したインクを完全に消すのは極めて困難です。
失敗してしまった場合は、完全に消すことよりも「目立たなくする」「デザインとして活かす」方向で考えるのが現実的です。
インクの種類や状況によって対処法は異なりますが、試す際は必ず生地を傷めないか、目立たない場所でテストしてから行ってください。
4.2.1 インクが乾く前(水性インクの場合)
描いてすぐに失敗に気づいた場合は、インクが定着する前に対処できる可能性があります。
すぐにティッシュや乾いた布でインクを吸い取り、水で濡らした布で叩くようにしてインクを薄めていきます。
石鹸や中性洗剤を使うとより落ちやすくなる場合があります。
4.2.2 インクが定着した後
定着後のインクを落とすのは非常に難しく、生地を傷めるリスクが伴います。
- 薬剤を使う方法:消毒用エタノールや、マニキュアを落とす除光液(アセトン配合のもの)を綿棒などに含ませ、インク部分を叩くようにして少しずつ溶かし出す方法があります。しかし、生地の色が抜けたり、輪ジミになったり、インクが余計に広がったりする可能性が非常に高いため、最終手段と考えましょう。行う際は、下に当て布をし、裏側から叩くのが基本です。
- 隠す・活かす方法:最も現実的で安全な対処法です。
- ワッペンやアップリケを上から貼る
- 刺繍を施して隠す
- 濃い色の布用ペンで塗りつぶし、デザインの一部にする
失敗を防ぐためにも、本番前に必ず端切れなどで試し書きをすることをおすすめします。
4.3 どこで布用ペンを購入できる?
布用ペンは、様々な場所で購入できます。
品揃えや価格帯が異なるため、目的に合わせてお店を選ぶと良いでしょう。
購入場所 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
文房具店 (ロフト、東急ハンズなど) |
定番品から少し専門的なものまで、バランスの取れた品揃え。ペン先の太さや色の種類も豊富に比較検討できる。 | 色々な種類を直接見て選びたい方、スタッフに相談したい方。 |
手芸用品店 (ユザワヤ、トーカイなど) |
DIYや本格的な作品作りに適したプロ仕様のペンが充実。マーカータイプだけでなく、筆タイプのペンなど特殊なものも見つかる。 | 手芸やクラフトが目的で、品質にこだわりたい方。 |
100円ショップ (ダイソー、セリアなど) |
名前書き用ペンが中心。非常に安価で手軽に試せるのが魅力。品揃えは店舗や時期によって変動する。 | とにかく安く済ませたい方、一時的な使用や、お試しで使ってみたい方。 |
大型スーパー・量販店 (イオン、イトーヨーカドーなど) |
学用品売り場や文具コーナーに、子供の名前書き用の定番品(サクラクレパス マイネームなど)が置かれていることが多い。 | お子さんの持ち物への名前書きなど、特定の用途で探している方。 |
ネット通販 (Amazon、楽天市場など) |
品揃えが最も豊富。国内外の様々なメーカーの製品が見つかり、レビューを参考に選べる。まとめ買いにも便利。 | 特定の商品を探している方、多くの選択肢から比較検討したい方。 |
5. まとめ
布ににじまないペンを選ぶ鍵は、布の表面に定着しやすい「顔料インク」を選び、用途に合ったペンを使い分けることです。
普段使いの衣類には洗濯に強い「布用マイネーム」、細かいイラストには極細タイプ、濃い色の布には「ポスカ」のように、目的別に最適な一本を見つけましょう。
記事で紹介した下準備やアイロンでの熱処理を実践すれば、洗濯しても色落ちしにくく、美しい仕上がりを長く保てます。