モバイルバッテリーの発火事故が不安な方へ。
この記事を読めば、買ってはいけない危険な製品に共通するサインと、安全な製品を選ぶための7つのポイントが分かります。
結論から言うと、安全なモバイルバッテリー選びで最も重要なのは、国の安全基準を満たした証である「PSEマーク」の有無です。
正しい知識を身につけ、発火や爆発のリスクを避け、安心して使える一台を選びましょう。
1. モバイルバッテリーの「安全」と「危険」なぜ知る必要があるのか
スマートフォンやタブレット、ワイヤレスイヤホンなど、私たちの生活に欠かせないデジタルガジェット。
その動力源として、今や一人一台が当たり前となった「モバイルバッテリー」は、外出先でのバッテリー切れの不安を解消してくれる、非常に便利なアイテムです。
しかし、その利便性の裏側には、発火や発煙、破裂といった深刻な事故につながる「危険性」が潜んでいることをご存知でしょうか。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の発表によると、モバイルバッテリーが関連する事故は後を絶たず、私たちの身近なところで実際に発生しています。
カバンの中や充電中に突然発火し、火災や火傷の原因となるケースも少なくありません。
なぜ、私たちはモバイルバッテリーの「安全」と「危険」について、正しく知る必要があるのでしょうか。
それは、あなたのスマートフォンを充電するための便利なツールが、一瞬にして火種に変わる可能性があるからです。
知識がないまま安易に製品を選んだり、誤った使い方をしたりすることは、あなた自身や家族、そして大切な財産を危険に晒す行為に他なりません。
1.1 あなたの日常に潜む、見過ごせないリスク
モバイルバッテリーの事故は、特別な状況下だけで起こるわけではありません。ごく普通の日常の中で、誰にでも起こりうるのです。
例えば、以下のようなケースが報告されています。
- 通勤・通学中のカバンの中で発火し、持ち物や衣類が燃えた。
- 就寝中に枕元で充電していたところ、異常発熱してベッドを焦がした。
- ズボンのポケットに入れていたら、圧迫されて破裂し火傷を負った。
安全に関する知識の有無が、どのような結果の違いを生むのか、具体的に見てみましょう。
比較項目 | 知識がある場合(安全な選択と使用) | 知識がない場合(危険な選択と使用) |
---|---|---|
身の安全 | 火傷や怪我のリスクを最小限に抑え、安心して使用できる。 | 突然の発火や破裂により、深刻な火傷や怪我を負う可能性がある。 |
財産の保護 | スマートフォンや家財などを火災から守ることができる。 | 火災により、大切な自宅や持ち物を失うリスクがある。 |
経済的側面 | 高品質で長持ちする製品を選べ、結果的にコストを抑えられる。 | 安価な粗悪品を買い替え続けたり、事故による損害賠償で大きな出費につながる。 |
公共の場での影響 | 飛行機や電車などの公共交通機関のルールを守り、周囲に迷惑をかけない。 | 公共の場で事故を起こし、他人に危害を加えたり、多大な迷惑をかける恐れがある。 |
このように、モバイルバッテリーに関する正しい知識は、単なる「豆知識」ではなく、私たちの安全な生活を守るための「必須スキル」と言えるのです。
1.2 この記事があなたの「安全な選択」をガイドします
「では、具体的にどうすれば危険を避けられるのか?」
「安全な製品は、どこを見ればわかるのか?」
そんな疑問や不安を解消するために、この記事は存在します。
この記事を最後まで読めば、危険な製品を見抜くサインから、本当に信頼できる安全なモバイルバッテリーを選ぶための具体的な7つのポイント、そして購入後の正しい使い方や処分方法まで、すべてを理解することができます。
モバイルバッテリーによる発火・発煙事故は、決して他人事ではありません。
この先の章で解説するポイントを一つひとつ確認し、正しい知識を身につけることが、あなた自身とあなたの大切なものを守るための最も確実な方法です。
さあ、一緒に安全なモバイルバッテリー選びの第一歩を踏み出しましょう。
2. モバイルバッテリーの危険性その根源はリチウムイオン電池
スマートフォンやノートパソコン、ワイヤレスイヤホンなど、私たちの生活に欠かせない多くのデジタル機器に採用されている「リチウムイオン電池」。
モバイルバッテリーも、このリチウムイオン電池を内蔵しています。
リチウムイオン電池は、小型・軽量でありながら大容量の電力を蓄えられるという非常に優れた特性を持っています。
しかし、その高いエネルギー密度こそが、一歩間違えれば発火や破裂といった重大な事故につながる危険性の根源となっているのです。
エネルギーをコンパクトに詰め込んでいるということは、そのエネルギーが制御不能な状態で放出された場合、大きな破壊力を生む可能性があることを意味します。
正常な製品を正しく使用している限りは安全ですが、製品の欠陥や誤った使い方によって、蓄えられたエネルギーが熱や炎として暴走してしまうリスクを常に内包しているのです。
モバイルバッテリーの安全性を理解するためには、まずこのリチウムイオン電池の特性と、事後につながる原因を正しく知ることが不可欠です。
2.1 モバイルバッテリー事故の主な原因とは
モバイルバッテリーに関する事故は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)にも数多く報告されています。
その原因は一つではなく、製品自体の問題から使用者の扱い方まで多岐にわたります。
ここでは、事故を引き起こす主な原因をカテゴリ別に整理して解説します。
事故原因のカテゴリ | 具体的な内容 | 発生しうる現象 |
---|---|---|
物理的要因 | 落下による強い衝撃、カバンの中での圧迫、ポケットに入れたまま座る、釘やドリルなど鋭利なものでの穿刺(せんし)。 | 内部にある正極と負極を隔てる「セパレーター」という薄い膜が損傷し、内部でショート(短絡)が発生。急激な発熱、発煙、最悪の場合は発火や破裂に至ります。 |
電気的要因 | 保護回路が正常に機能しない状態での過充電・過放電。金属製の鍵やコインなどと一緒に持ち運び、充放電端子がショートすること。 | 過充電は電池内部の材料を劣化させ、ガスを発生させて膨張や発火の原因となります。外部ショートは、予期せぬ大電流が流れることで、バッテリーが異常発熱し、発火する危険性が非常に高まります。 |
環境的要因 | 真夏の車内や直射日光の当たる場所への放置。ストーブなど暖房器具の近くでの使用・保管。水濡れや結露。 | 高温はリチウムイオン電池の化学反応を異常に促進させ、内部圧力の上昇や発熱を引き起こします。水濡れは内部回路の腐食やショートを招き、故障や異常作動の原因となります。 |
製品・品質要因 | 製造過程での微小な金属片などの異物混入。品質の低いバッテリーセルや、安全保護機能が搭載されていない、あるいは粗悪な保護回路の使用。 | 安価な非正規ブランド製品に多く見られる問題です。内部ショートや過充電を防止できず、通常の使用でも突然発火するリスクを抱えています。経年劣化による性能低下も事故の一因です。 |
これらの原因は単独で発生するだけでなく、複合的に絡み合って事故につながるケースも少なくありません。
例えば、品質の低い製品がわずかな衝撃を受けただけで、簡単に内部ショートを起こしてしまう、といった具合です。
次の章では、こうした危険な製品を避けるための具体的な見分け方を解説していきます。
3. 買ってはいけないモバイルバッテリー危険な製品を見分ける3つのサイン
モバイルバッテリーによる事故の多くは、粗悪な製品が原因で引き起こされています。
安全な製品を選ぶためには、まず「買ってはいけない危険な製品」の特徴を知ることが重要です。
ここでは、購入を避けるべきモバイルバッテリーが発している3つの危険なサインについて、具体的に解説します。
3.1 異常に安いモバイルバッテリーに潜む罠
オンラインストアやディスカウントショップで、有名メーカーの同等品と比べて半額以下など、市場価格から著しくかけ離れた価格で販売されているモバイルバッテリーを見かけることがあります。
しかし、安さには必ず理由があり、その多くは安全性を犠牲にしたコスト削減によるものです。
異常に安い製品には、次のようなリスクが潜んでいます。
- 品質の低いバッテリーセル:本来であれば厳格な品質管理を経て選別されるバッテリーセルですが、低品質な再生品や基準を満たさないセルが使われている可能性があります。これらは蓄電性能が低いだけでなく、発熱や発火のリスクが非常に高くなります。
- 安全保護回路の省略・簡素化:過充電や過放電、ショートなどを防ぐための保護回路が搭載されていない、あるいは非常に簡素なものであるケースです。これにより、スマートフォンなど接続した機器を故障させたり、バッテリー本体が発火したりする危険性があります。
- 容量の偽装:「30000mAh」と表示されていても、実際にはその半分程度の容量しかない製品も少なくありません。安価な低容量バッテリーを複数搭載し、あたかも大容量であるかのように見せかけています。
信頼できるメーカーの製品価格は、安全性を確保するための研究開発費、高品質な部品代、そしてPSEマーク取得などの認証費用が反映されたものです。
以下の価格相場と比較して、あまりにも安すぎる製品は避けるのが賢明です。
バッテリー容量 | 価格相場 | 主な用途 |
---|---|---|
5,000mAh | 2,000円~4,000円 | スマホ約1回分の充電、コンパクトで持ち運び重視 |
10,000mAh | 3,000円~6,000円 | スマホ約2~3回分の充電、普段使いに最適 |
20,000mAh | 5,000円~9,000円 | スマホ約4~5回分、タブレットやPCの充電にも |
※上記はあくまで目安です。急速充電規格(USB PDなど)への対応やポート数によって価格は変動します。
3.2 不明瞭な表示やブランドのモバイルバッテリー
製品本体やパッケージの表示は、その製品の信頼性を判断するための重要な情報源です。
必要な情報が記載されていない、あるいはメーカー情報が不明な製品は、品質や安全性に責任を持つ意思がないことの表れであり、非常に危険です。
特に以下の点に注意してください。
チェック項目 | 危険なサインの例 |
---|---|
PSEマーク | PSEマークの表示がない(法律違反であり、国内での販売は禁止されています)。 マークのデザインが歪んでいたり、不鮮明だったりする(偽造の可能性)。 |
製造・輸入事業者名 | メーカー名やブランド名、輸入事業者名の記載がない。 連絡先(住所や電話番号)の記載がない。 実在しない会社名が記載されている。 |
製品仕様の表示 | 定格容量(mAh)やワット時定格量(Wh)の記載がない。 日本語の文法が不自然、誤字脱字が多い商品説明。 |
Anker(アンカー)、cheero(チーロ)、Belkin(ベルキン)、ELECOM(エレコム)といった有名メーカーは、必ずこれらの情報を明確に記載しています。
逆に、聞いたことのないブランド名で、かつ上記の表示が欠けている製品は、万が一事故が起きても何の保証もサポートも受けられない可能性が高いため、絶対に購入してはいけません。
3.3 外観に異常があるモバイルバッテリー
モバイルバッテリーは精密な電子機器です。
外観の異常は、内部で深刻な問題が起きているサインかもしれません。
新品・中古品にかかわらず、購入前や使用前に必ず本体の状態を確認し、少しでも異常を感じたら使用を中止してください。
特に注意すべき外観の異常は以下の通りです。
-
- 膨張・膨らみ:最も危険な兆候です。ケースが明らかに膨らんでいる、あるいは一部分が盛り上がっている場合、内部のバッテリーが劣化してガスが発生しています。そのまま使い続けると、破裂や発火に至る危険性が極めて高い状態です。
- ケースの破損・ひび割れ:落下などによる衝撃でケースにひびが入ったり、割れたりしていると、内部のバッテリーセルや基板が剥き出しになる恐れがあります。湿気やホコリが侵入し、ショートを引き起こす原因となります。
- 異臭:本体から化学薬品のような甘い匂いや、焦げたような異臭がする場合、内部の電解液が漏れ出している可能性があります。有毒な物質であるため、直ちに使用を中止し、換気の良い場所に保管してください。
- 端子の変形・サビ:USBポートなどの端子部分が変形していたり、サビや汚れが付着していたりすると、正常な充電ができないだけでなく、接触不良による異常発熱やショートの原因となります。
- 異常な発熱:充電中や使用中に「温かい」と感じる程度は正常ですが、「熱くて持てない」ほどの異常な発熱がある場合は、内部で何らかのトラブルが発生しているサインです。
これらの異常を発見した場合は、感電や火傷の危険があるため、決して自分で分解しようとせず、直ちに使用と充電を中止してください。
そして、メーカーのサポートセンターや購入した販売店に連絡し、指示を仰ぎましょう。
4. 「安全」なモバイルバッテリーを見分ける7つのポイント
危険なモバイルバッテリーを避けるだけでなく、積極的に「安全」な製品を選ぶことが、あなた自身や大切なスマートフォンを守る最善の方法です。
ここでは、安心して使えるモバイルバッテリーを選ぶための具体的な7つのチェックポイントを、専門的な視点から詳しく解説します。
4.1 ポイント1 PSEマークの有無を確認する
安全なモバイルバッテリー選びの第一歩は、PSEマークの確認です。
これは日本の法律(電気用品安全法)で定められた安全基準を満たしていることを証明する、いわば「国の安全認証」です。
モバイルバッテリーは「特定電気用品以外の電気用品」に分類されるため、本体やパッケージに丸形のPSEマークが表示されている必要があります。
このマークがない製品は、日本国内での販売が法律で禁止されており、安全性に重大な懸念があると言わざるを得ません。
さらに重要なのが、PSEマークの近くに届出事業者名(日本の輸入・製造事業者名)が記載されているかという点です。
PSEマークだけが印刷され、事業者名がないものは、正規の手続きを踏んでいない偽造品の可能性が非常に高いため、絶対に購入してはいけません。
4.2 ポイント2 信頼できるメーカーの製品を選ぶ
モバイルバッテリーは、精密な電子部品と化学物質の塊です。
そのため、どのメーカーが製造したかによって、品質と安全性に天と地ほどの差が生まれます。
長年の実績があり、品質管理体制がしっかりしている信頼できるメーカーの製品を選ぶことが、事故を未然に防ぐための賢明な選択です。
日本国内で高い評価と信頼を得ている主なメーカーには、以下のようなブランドがあります。
- Anker (アンカー): モバイルバッテリーの代名詞とも言えるトップブランド。高い技術力と充実した安全機能、手厚い保証で絶大な人気を誇ります。
- cheero (チーロ): 日本発のブランドで、デザイン性と安全性を両立。ダンボーのキャラクターモデルでもおなじみです。
- ELECOM (エレコム): PC周辺機器の大手メーカー。日本の企業ならではの厳しい品質基準と、豊富なラインナップが魅力です。
- BUFFALO (バッファロー): こちらも日本の大手PC周辺機器メーカー。安定した品質と、家電量販店などでの入手しやすさが特徴です。
- Panasonic (パナソニック): 日本を代表する電機メーカー。自社製の高品質なバッテリーセルを使用するなど、信頼性は抜群です。
これらのメーカーは、万が一の際にもしっかりとしたサポートが期待できます。
一方で、聞いたことのない無名ブランドや、極端に安いノーブランド品は、コスト削減のために安全対策が疎かになっているケースが多く、避けるのが賢明です。
4.3 ポイント3 保証とサポート体制が充実しているか
製品の品質に自信があるメーカーほど、保証期間を長く設定し、サポート体制を充実させています。
最低でも1年以上のメーカー保証が付いている製品を選びましょう。
Ankerのように18ヶ月や24ヶ月といった長期保証を提供しているメーカーは、それだけ自社製品の耐久性と安全性に自信がある証拠と捉えることができます。
また、購入後のサポート体制も重要です。以下の点を確認しておくと、万が一のトラブルの際に安心です。
- 日本語でスムーズに問い合わせができるか(電話、メール、チャットなど)
- 公式サイトに製品情報やFAQがきちんと掲載されているか
- 生産物賠償責任保険(PL保険)に加入しているか
特にPL保険への加入は、製品が原因で火災などの物損事故や怪我が発生した場合に補償を受けられるため、安全性を重視する上で非常に重要な指標となります。
4.4 ポイント4 適正な容量表示とワット時定格量を確認する
モバイルバッテリーの性能を示す「mAh(ミリアンペア時)」という容量表示。
ここに大きな嘘が隠れている場合があります。手のひらサイズなのに「50000mAh」や「100000mAh」といった、物理的にあり得ないほどの超大容量を謳う製品は、ほぼ100%虚偽表示であり、粗悪な部品が使われている危険な製品です。
また、もう一つ確認すべき重要な数値が「Wh(ワット時定格量)」です。
これは航空機内への持ち込み制限に関わる国際的な基準値で、信頼できる製品には必ず本体に記載されています。
記載がない場合でも、以下の計算式で算出できます。
ワット時定格量(Wh) = 定格電圧(V) × 定格容量(mAh) ÷ 1000
※リチウムイオン電池の電圧は通常3.7Vで計算されることが多いです。
Whの表示がきちんとされている製品は、法令を遵守している証であり、信頼性の判断材料になります。
4.5 ポイント5 高品質なバッテリーセルを使用しているか
モバイルバッテリーの心臓部であり、発火・爆発の根源ともなるのが「バッテリーセル」です。
このセルの品質が、製品の安全性と寿命を大きく左右します。
信頼できるメーカーは、LG、サムスン、パナソニックといった世界的に評価の高いメーカー製の高品質なバッテリーセルを採用していることが多く、製品ページでその旨を公表している場合もあります。
これらのセルはエネルギー密度が高く、安定しており、劣化しにくいのが特徴です。
一方、安価な製品では、品質の低いセルや、一度使われた電子機器から取り出して再利用した「リサイクルセル」が使われていることがあります。
こうしたセルは性能にばらつきがあり、劣化が早く、内部ショートを起こして発火するリスクが格段に高まります。
4.6 ポイント6 過充電防止機能などの保護回路を搭載しているか
現代の安全なモバイルバッテリーには、事故を防ぐための様々な保護回路(安全機能)が搭載されているのが当たり前です。
これらの機能がなければ、スマートフォンを満充電した後も電力を送り続けて過充電状態になったり、ショートしてしまったりと、非常に危険です。
最低でも以下の基本的な保護機能が搭載されているか、製品仕様で必ず確認してください。
保護機能 | 役割 |
---|---|
過充電保護 | 接続機器やモバイルバッテリー本体が満充電になった際に、自動で充電を停止する機能。発熱やバッテリー劣化を防ぎます。 |
過放電保護 | バッテリーを使い切りすぎるのを防ぐ機能。過度な放電はバッテリーの寿命を著しく縮める原因になります。 |
過電流保護 | 規定以上の電流が流れた場合に、供給をストップする機能。接続機器の故障を防ぎます。 |
短絡(ショート)保護 | プラスとマイナスが接触してしまうショートを検知した際に、瞬時に電流を遮断する機能。発火や爆発を防ぐ最も重要な機能の一つです。 |
過熱(温度)保護 | バッテリーセルの温度が異常に高くなった場合に、充放電を停止する機能。熱暴走による事故を防ぎます。 |
Ankerの「MultiProtect」のように、これらの保護機能を組み合わせた独自の多重保護システムを搭載しているメーカーもあり、安全性をアピールする大きなポイントとなっています。
4.7 ポイント7 購入者のレビューや評判を参考にする
メーカーの宣伝文句だけでなく、実際に製品を使ったユーザーの生の声は非常に参考になります。
Amazonや楽天市場などのECサイト、価格.comなどのレビューサイトで、購入を検討している製品の評判を確認しましょう。
ただし、レビューを見る際には注意が必要です。
高評価ばかりが並ぶ、不自然に日本語が拙いレビューは「サクラレビュー」の可能性があります。
本当に参考になるのは、具体的な使用感や、メリット・デメリットが正直に書かれているレビューです。
特に、「使っていたら異常に熱くなった」「数回で膨らんできた」「焦げ臭い匂いがした」といった、安全性に関わるネガティブなレビューが複数見られる製品は、絶対に避けるべきです。
一つのサイトだけでなく、複数のサイトや個人のブログ記事などを横断的にチェックすることで、より客観的な判断ができます。
5. モバイルバッテリーを安全に使うための注意点
安全なモバイルバッテリーを選んだとしても、その使い方や保管方法を誤れば、思わぬ事故につながる可能性があります。
製品の性能を最大限に引き出し、長く安全に使い続けるために、日頃から以下の点に注意しましょう。
5.1 正しい充電方法と保管場所
モバイルバッテリーの寿命や安全性は、日々の充電習慣と保管環境に大きく左右されます。
何気なく行っている行為が、実はバッテリーに大きな負担をかけているかもしれません。
【充電時のポイント】
- 付属品・メーカー推奨品を使う:充電に使用するUSBケーブルやACアダプターは、製品に付属していたものか、メーカーが推奨する品質の確かなものを使用してください。安価な非純正品は、品質が低く、異常な発熱やショートを引き起こす原因となり大変危険です。
- 充電しながらの使用は避ける:スマートフォンなどを充電しながら操作する「ながら充電(パススルー充電)」は、モバイルバッテリー本体と充電対象のデバイス両方に大きな負荷をかけ、高温になる原因となります。特に夏場や密閉された空間では、熱がこもりやすくなるため避けましょう。
- 満充電・ゼロ残量での放置をしない:充電が100%になってもケーブルを繋いだままにする「過充電」や、バッテリー残量が0%のまま長期間放置する「過放電」は、リチウムイオン電池の劣化を早める最大の要因です。多くの製品には保護機能が搭載されていますが、それに頼り切らず、充電が完了したら速やかにケーブルを抜き、残量ゼロになる前に充電することを心がけましょう。
【保管時のポイント】
- 熱がこもらない場所に置く:充電中や保管時は、布団やソファの上、カバンの中など熱がこもりやすい場所を避けてください。硬く平らな、通気性の良い場所が理想です。
- 金属類と一緒にしない:バッグやポケットの中で、鍵や硬貨、アクセサリーなどの金属製品と一緒に保管すると、端子部分が接触してショート(短絡)し、発火する危険性があります。専用のポーチに入れるなどして、分けて持ち運びましょう。
- 子供やペットの手の届かない場所へ:小さなお子様やペットが誤って口に入れたり、噛みついたりすると、破損や感電、誤飲などの重大な事故につながる恐れがあります。
5.2 高温多湿を避ける重要性
モバイルバッテリーの心臓部であるリチウムイオン電池は、特に「熱」に弱いという性質を持っています。
高温環境下に置かれると、内部の化学反応が異常に活発化し、発熱、発火、さらには破裂に至る危険性が急激に高まります。
以下のような場所には、決してモバイルバッテリーを放置しないでください。
- 真夏の車内:特にダッシュボードの上は、外気温がそれほど高くなくても70℃以上に達することがあり、極めて危険です。短時間であっても車内に置き忘れないようにしましょう。
- 直射日光の当たる場所:窓際や屋外のテーブルの上など、直射日光が当たる場所に長時間置くのは避けてください。
- 暖房器具の近く:ストーブ、ヒーター、こたつの中など、冬場の暖房器具のそばも高温になりやすいため危険です。
- 湿気の多い場所:キッチンや洗面所、お風呂場など湿度の高い場所での使用・保管は、内部の電子回路が腐食したり、結露によってショートしたりする原因となります。
5.3 飛行機での持ち込みルールと制限
旅行や出張で飛行機を利用する際、モバイルバッテリーの取り扱いには国際的なルールが定められています。
ルールを知らずにいると、保安検査場で没収されるだけでなく、安全運航を妨げることにもなりかねません。
必ず事前にルールを確認しましょう。
最も重要なルールは、「モバイルバッテリーは預け入れ荷物(受託手荷物)に入れられず、機内持ち込み手荷物としてのみ持ち込める」という点です。
これは、万が一発火などのトラブルが発生した際に、客室内ですぐに対応できるようにするためです。
さらに、持ち込めるモバイルバッテリーには容量(Wh:ワット時定格量)による制限があります。
ワット時定格量(Wh) | 取り扱い | 備考 |
---|---|---|
100Wh以下 | 機内持ち込み可能 | 個数制限は基本的にないが、航空会社によっては独自の個数制限(例:合計20個までなど)を設けている場合がある。 |
100Wh超 160Wh以下 | 機内持ち込み可能(2個まで) | ほとんどの場合、航空会社の許可は不要だが、事前に確認するのが望ましい。 |
160Wh超 | 機内持ち込み・預け入れ不可 | いかなる場合も輸送は認められていない。 |
お使いのモバイルバッテリーのワット時定格量(Wh)は、本体に記載されていることが多いです。
もしmAh(ミリアンペア時)とV(ボルト)の表示しかない場合は、以下の式で計算できます。
ワット時定格量(Wh) = 定格容量(mAh) ÷ 1000 × 定格電圧(V)
※多くのモバイルバッテリーの電圧は3.7Vで計算されています。
例:20,000mAhの製品 → 20000 ÷ 1000 × 3.7V = 74Wh。この場合は100Wh以下なので、個数制限の範囲内で持ち込み可能です。
※これらのルールは航空会社や渡航先の国によって細部が異なる場合があります。
旅行前には必ず利用する航空会社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
5.4 寿命を迎えたモバイルバッテリーの適切な廃棄方法
膨らんできたり、充電できなくなったりした寿命のモバイルバッテリーは、正しく処分する必要があります。
絶対に一般のごみ(可燃ごみ・不燃ごみ・資源ごみ)として捨ててはいけません。
モバイルバッテリーがごみ収集車や処理施設で強い圧力によって押し潰されると、内部でショートが起こり、発火・爆発する火災事故が全国で多発しています。
これは非常に危険な行為です。
寿命を迎えたモバイルバッテリーは、以下の方法で適切に処分してください。
- リサイクル協力店の回収ボックスを利用する:
最も安全で推奨される方法です。家電量販店(ビックカメラ、ヨドバシカメラ、ヤマダデンキなど)や一部のスーパー、ホームセンター、地方自治体の施設などに設置されている「小型充電式電池リサイクルBOX」に入れてください。一般社団法人JBRCのシンボルマークが目印です。 - お住まいの自治体のルールに従う:
自治体によっては、「有害ごみ」や「危険ごみ」として特定の日に回収していたり、専用の回収ボックスを別途設置していたりする場合があります。お住まいの市区町村のホームページやごみ出しパンフレットで確認しましょう。
廃棄する前には、発火事故を防ぐために、プラスとマイナスの金属端子部分(USBポートやケーブルの先端など)をビニールテープやセロハンテープで覆い、絶縁処理を行ってください。
この一手間が、安全なリサイクルにつながります。
6. モバイルバッテリーに異常を感じたらどうする
毎日便利に使っているモバイルバッテリーも、内部のリチウムイオン電池が劣化したり、何らかのダメージを受けたりすると、思わぬ事故につながる危険性があります。
もしお使いのモバイルバッテリーに「いつもと違うな?」と感じる点があれば、それは危険のサインかもしれません。
自己判断で使い続けず、直ちに使用を中止することが、あなた自身と周囲の安全を守るための最も重要な第一歩です。
この章では、モバイルバッテリーに異常が見られた場合の具体的な兆候と、万が一事故が発生してしまった際の正しい対処法について、詳しく解説します。
6.1 発熱や膨張などの異常兆候
モバイルバッテリーの異常は、五感で感じ取れるサインとして現れることが多くあります。
以下に示すような兆候に気づいたら、すぐに使用を中止し、充電ケーブルからも外してください。特に「膨張」は発火・破裂のリスクが非常に高い危険な状態です。
異常の兆候 | 考えられる原因 | 危険度 | 初期対応 |
---|---|---|---|
異常な発熱 | 内部回路のショート、過充電・過放電、バッテリーセルの劣化 | 高 | すぐに使用と充電を中止し、熱が完全に冷めるまで様子を見る。触れないほど熱い場合は特に危険。 |
本体の膨張・膨らみ | バッテリー内部でのガス発生(電解液の劣化・分解)。発火・破裂の危険性が極めて高い。 | 極めて高い | 直ちに使用を中止し、衝撃を与えないように金属製以外の燃えにくい容器に入れ、安全な場所で保管する。 |
異臭(化学薬品のような匂い) | 内部の電解液が漏れ出している可能性。 | 高い | すぐに使用を中止し、換気の良い場所に移動させる。漏れ出た液体には絶対に素手で触れない。 |
変形・破損 | 落下などの物理的な衝撃による内部構造の損傷。 | 高い | 外装のひび割れや凹みを発見したら、内部も損傷している可能性があるため、使用を中止する。 |
充電・給電の異常 | バッテリーの寿命、保護回路の故障、コネクタ部分の破損。 | 中 | 満充電にならない、すぐに残量がなくなるなどの症状は寿命のサイン。ただし、突然使えなくなった場合は故障も疑われるため使用を中止する。 |
これらの兆候が見られたモバイルバッテリーは、たとえその後正常に動作しているように見えても、内部では危険な状態が進行している可能性があります。
絶対に分解や修理を自分で試みたり、力を加えて元の形に戻そうとしたりしないでください。非常に危険な行為であり、発火や怪我の原因となります。
6.2 事故が起きた場合の初期対応
万が一、モバイルバッテリーから発煙・発火してしまった場合、パニックにならず冷静に対処することが被害を最小限に食い止める鍵となります。
以下のステップに従って、安全を最優先に行動してください。
6.2.1 ステップ1: 安全の確保と初期消火
まず、ご自身の安全を確保してください。
煙を吸い込まないように口や鼻をハンカチで覆い、バッテリーから距離を取ります。
もし火がごく小さく、初期消火が可能だと判断した場合は、消火器を使用してください。
リチウムイオン電池の火災には、粉末ABC消火器や、リチウムイオン電池火災対応のエアゾール式簡易消火具が有効です。
水や濡れタオルをかける方法は、感電のリスクや水蒸気爆発を誘発する可能性があり、推奨されません。
少しでも危険を感じたり、火が天井に燃え移りそうだったりした場合は、初期消火にこだわらず、直ちにその場から避難し、119番通報を行ってください。
6.2.2 ステップ2: 関係各所への連絡
安全な場所に避難した後、以下の関係各所に連絡・相談しましょう。
- 消防署(119番): 火災が発生した場合は、鎮火後であっても必ず通報し、指示を仰いでください。再発火の危険性があります。
- メーカー・販売店のカスタマーサポート: 製品の保証期間内であれば、交換や返金の対象となる場合があります。事故の状況(製品名、購入日、使用状況、被害の程度など)を正確に伝えましょう。
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE): 製品事故の情報を収集・公表している機関です。同様の事故の再発防止のため、情報提供が推奨されます。
6.2.3 ステップ3: 事故後のバッテリーの取り扱い
発火したモバイルバッテリーは、鎮火したように見えても内部で化学反応が続いている可能性があり、非常に危険です。
消防やメーカーの指示があるまで、むやみに触ったり動かしたりしないでください。
処分する際は、絶対に一般ごみ(燃えるごみ・燃えないごみ)として捨ててはいけません。
ごみ収集車や処理施設での火災原因となり、大変危険です。
購入した店舗や、お住まいの自治体の指示に従い、リサイクル協力店(JBRC加盟店など)に持ち込むなど、適切な方法で処分してください。
7. まとめ
モバイルバッテリーの利便性の裏には、内蔵のリチウムイオン電池による発火や膨張といった危険が潜んでいます。
事故を未然に防ぐ結論として、購入時には「PSEマーク」の有無や信頼できるメーカー製かを確認し、危険な製品を避けることが最も重要です。
そして、安全な製品を選んだ後も、高温多湿を避ける、衝撃を与えないといった正しい使い方を徹底し、万一の異常時には直ちに使用を中止しましょう。
これらの知識が、あなた自身と周囲の安全を守ります。