この記事では、気圧の単位「ミリバール(mb)」と「ヘクトパスカル(hPa)」の違いと換算関係(数値は実質同じ)、なぜ国際単位系SIに合わせてヘクトパスカルに統一されたのか、その背景となる世界的な標準化や日本の気象庁による変更の経緯をわかりやすく解説します。
また、過去の天気図や台風情報で使われていたミリバール表記と、現在の天気予報でのヘクトパスカル表記の読み取り方、気圧変化が体調や頭痛に与える影響など、日常生活で役立つ気圧の知識も整理し、今日から迷わず気圧情報を活用できるようになることを目指します。
1. 気圧の単位とは何か
「ミリバール」と「ヘクトパスカル」の違いを理解するためには、そもそも気圧とは何か、その大きさを表す「単位」とはどのようなものかを押さえておく必要があります。
この章では、気圧とその単位の基本を整理し、天気予報やニュースで登場する数値の意味が直感的にイメージできるようになることを目指します。
1.1 気圧の基礎知識
まずは、気圧という概念そのものと、日常でよく耳にする「1気圧」「1013ヘクトパスカル」といった表現の中身について整理します。
1.1.1 気圧とは「空気の重さによる圧力」
地球のまわりは「大気」と呼ばれる空気の層でおおわれており、その空気にも質量(重さ)があります。
この空気が地表に向かって重力で引きつけられていることで、私たちの体や物体の表面にはたえず力がかかっています。
この空気の重さが、単位面積あたりにおよぼしている力の大きさを表したものが「気圧」です。
物理学では、ある面に垂直にかかる力を「圧力」と呼び、そのうち「空気」による圧力を特に「気圧」と呼び分けています。
したがって、気圧も圧力の一種であり、他の圧力(例えば水圧やタイヤの空気圧)と同じように「力の大きさ ÷ 面積」という考え方で表すことができます。
1.1.2 大気圧と標準気圧
地表付近で私たちが常に受けている気圧は「大気圧」と呼ばれます。
大気圧の大きさは場所や天気、季節によって変動しますが、海面付近で平均的に観測される値として「標準気圧」が定義されています。
現在、国際的に広く用いられている標準気圧は、次のように定められています。
- 約 1013 ヘクトパスカル(hPa)
- 約 1013 ミリバール(mbar)
- 101325 パスカル(Pa)
- 1 気圧(atm)
このように、同じ物理量でも表現に使う「単位」が異なれば、数値や記号も変わることになります。
そこで、どの単位がどのくらいの大きさを表しているのかを整理する必要が出てきます。
| 単位名称 | 記号 | 標準気圧のおおよその値 | 特徴・主な利用分野 |
|---|---|---|---|
| パスカル | Pa | 101325 Pa | 圧力の国際単位(SI)。物理・工学・気象学など幅広い分野で使われる。 |
| ヘクトパスカル | hPa | 約 1013 hPa | 気象分野で事実上の標準単位。日本の天気予報や天気図で広く使用されている。 |
| ミリバール | mbar | 約 1013 mbar | かつての気象分野の代表的な単位。現在は多くの国でヘクトパスカルへ移行。 |
| 気圧 | atm | 1 atm | 「1気圧」として日常会話や理科の授業で用いられる基準。工学・化学分野などでも利用。 |
| ミリメートル水銀柱 | mmHg | 約 760 mmHg | 水銀柱の高さで圧力を表す単位。血圧の測定など医療分野でよく使われる。 |
表から分かるように、同じ「標準気圧」でも単位が変われば数値も変わります。
そのため、どの単位系で話をしているのかを意識して数値を読むことが重要です。
特に、ミリバールとヘクトパスカルは値がほぼ同じであるため(1 mbar = 1 hPa)、ニュースや資料によっては単位だけが違って見えるケースもあります。
1.1.3 気圧と天気・高度の関係
気圧は、天気や高度とも密接に関わっています。
一般に、高度が高くなるほど頭上にある空気の量が少なくなるため、山に登ると気圧は低くなり、海面近くでは気圧は高くなるという傾向があります。
また、天気図では同じ気圧の地点を結んだ「等圧線」が描かれ、周囲より気圧が高い領域を「高気圧」、低い領域を「低気圧」と呼びます。
高気圧と低気圧の分布は、晴れ・曇り・雨といった天気の変化や、風の強さ・向きに大きな影響を与えるため、気圧の単位を理解しておくことは、天気図を読み解くうえで不可欠です。
このように、気圧は単なる数値ではなく、空気の重さ・高さ・天気の状態をまとめて表現している物理量であり、その大きさを正確に表すためにさまざまな「単位」が使われています。
1.2 気圧の単位の種類と特徴
次に、気圧を表す際に使われる単位そのものに焦点を当て、どのような単位があり、それぞれどの分野で使われているのかを整理します。
1.2.1 国際単位系(SI)における圧力の単位「パスカル」
圧力の国際的な標準単位は「パスカル(Pa)」です。パスカルは、1平方メートルの面に1ニュートンの力が垂直にかかったときの圧力として定義されており、国際単位系(SI)で定められた圧力の単位です。
- 1 Pa = 1 N/m²(ニュートン毎平方メートル)
- 100 Pa = 1 hPa(ヘクトパスカル)
- 100 Pa = 1 mbar(ミリバール)
パスカルは物理学や工学など、非常に幅広い分野で使われますが、気圧を日常的に扱う気象分野では数値が大きくなりすぎるため、その100倍を1とした「ヘクトパスカル」や「ミリバール」といった、扱いやすい大きさの単位が古くから使われてきました。
1.2.2 天気予報でよく使われる単位「ヘクトパスカル」「ミリバール」
日本の天気予報や台風情報では、「中心気圧 950ヘクトパスカル」「海面気圧 1013ヘクトパスカル」といった表現が頻繁に登場します。
かつては「ミリバール」が主流でしたが、現在はヘクトパスカルが事実上の標準単位として定着しています。
ヘクトパスカルとミリバールはどちらもパスカルをもとにした圧力の単位で、数値の大きさは次のような関係にあります。
| 単位 | パスカルに換算した値 | 関係性 |
|---|---|---|
| 1 ヘクトパスカル(hPa) | 100 Pa | 1 hPa = 100 Pa |
| 1 ミリバール(mbar) | 100 Pa | 1 mbar = 100 Pa |
| ヘクトパスカルとミリバール | — | 1 hPa = 1 mbar |
この表から分かるとおり、ヘクトパスカルとミリバールは、数値としては同じ大きさを表す単位です。
違いは、どの単位系に属する名称を使うか、どの表記を公式に採用するかという点にあります。
なぜミリバールからヘクトパスカルへと表記が移り変わっていったのか、という歴史的な背景や理由については、後の章で詳しく解説します。
1.2.3 その他の気圧・圧力の単位
気圧や圧力を表す単位は、ヘクトパスカルやミリバール以外にもいくつか存在します。代表的なものとして、次のような単位があります。
- 気圧(atm)…「1気圧」として基準的に用いられる単位。標準気圧を 1 atm と定めている。
- ミリメートル水銀柱(mmHg)…水銀柱の高さで圧力を表す単位。血圧計など医療分野で広く使われている。
- キロパスカル(kPa)…1 kPa = 1000 Pa。工学や産業分野、ガスの圧力などで用いられることが多い。
このように、同じ「圧力」や「気圧」を表す場合でも、分野ごとに慣れ親しまれた単位が存在するため、単位名を見ただけで「どのくらいの大きさなのか」「どの分野の話なのか」をイメージできるようにしておくと理解がスムーズになります。
1.3 気圧の単位が必要となるシーン
気圧の単位は、単なる理科用語にとどまらず、日常生活やニュース、実務のさまざまな場面で登場します。
この節では、どのようなシーンで気圧の単位が役立つのかを整理します。
1.3.1 天気図・天気予報を読むとき
テレビやインターネットで表示される天気図には、「高気圧」「低気圧」とともに、その中心付近の気圧がヘクトパスカルの単位で書かれています。
また、台風情報では「中心気圧 950ヘクトパスカル」「中心付近の最大風速」など、気圧や風に関する数値が並びます。
このとき、「1000ヘクトパスカル前後がふだんの気圧」「それよりかなり低いと強い低気圧・台風の可能性がある」といった、おおまかな感覚を持っていると、天気図や台風情報から危険度をイメージしやすくなります。
そのためには、気圧の単位と標準的な値の関係を理解しておくことが重要です。
1.3.2 日常生活や健康管理での活用
近年は、スマートフォンや腕時計、登山用の機器などに気圧センサーが搭載され、現在地の気圧の変化をリアルタイムで確認できるようになっています。
これにより、天気の変化を予測したり、高度のおおよその目安を知ったりすることが可能です。
また、気圧の変化が体調に影響することも知られており、アプリや気象情報サービスのなかには、気圧の予測をもとに頭痛や関節痛などの注意喚起を行うものもあります。
その際にも、「今日は気圧がいつもより何ヘクトパスカルくらい低いのか・高いのか」という感覚を持っておくと、自分の体調との関係を把握しやすくなります。
このように、気圧の単位は単なる数式上の記号ではなく、天気や安全、健康管理を考えるうえでの重要な手がかりとなるものです。
次の章以降では、特に天気予報でよく登場する「ミリバール」と「ヘクトパスカル」に焦点を当て、その歴史や違いを詳しく見ていきます。
2. ミリバールとはどんな単位か
ミリバール(記号:mbar)は、かつて気象分野で標準的に使われていた気圧の単位で、現在主流となっているヘクトパスカル(hPa)と事実上同じ大きさを持つという特徴があります。
現在、日本の天気予報や気象庁の観測データではヘクトパスカルが用いられていますが、一定の年齢以上の人にとっては「台風の中心気圧は960ミリバール」といった表現のほうがなじみ深い場合もあります。
この背景には、ミリバールという単位が長年にわたり、天気図・実況天気予報・教科書などで広く使われてきた歴史があります。
2.1 ミリバールの定義と歴史
ミリバールは、より大きな単位である「バール(bar)」を基準として定義されます。
バールは、日常的な大気圧の大きさに近い値を1とすることを目指して考案された単位で、1バール = 100,000パスカル(Pa)と定義されています。
このバールを1,000分の1にしたものがミリバールで、数式で書くと次のようになります。
1ミリバール(1 mbar) = 0.001バール(bar) = 100パスカル(Pa)
現在広く使われている国際単位系(SI)では、圧力の基本単位はパスカル(Pa)です。
したがって、ミリバールはあくまでSI以外の単位ですが、1ミリバール = 100パスカルという、ちょうどきりのよい値で対応が取れるため、単位換算は非常に簡単です。
| 単位名 | 記号 | 数値関係 | おおよその大きさ・説明 |
|---|---|---|---|
| ミリバール | mbar | 1 mbar | かつての気象分野で標準的だった気圧の単位 |
| ヘクトパスカル | hPa | 1 hPa = 1 mbar | 現在の天気予報で標準的に使われている単位 |
| パスカル | Pa | 1 mbar = 100 Pa | 国際単位系(SI)における圧力の基本単位 |
| 標準大気圧 | atm | 1 atm ≒ 1,013.25 mbar | 海面付近の平均的な大気圧を1とした単位 |
標準大気圧は、通常
約1,013ミリバール(正確には1,013.25ミリバール)
とされています。つまり、海面付近の平均的な大気圧は、およそ「1,000ミリバール前後」と表現でき、天気図上での扱いやすさを考えると非常に都合がよい値です。
また、「水銀柱の高さ」で表す昔ながらの単位との対応を見ると、次のようになります。
| 単位 | 記号 | ミリバールとの関係 | 補足説明 |
|---|---|---|---|
| ミリメートル水銀柱 | mmHg | 1 mbar ≒ 0.75 mmHg | 血圧計などで今も広く使われる単位 |
| トル | Torr | 1 mbar ≒ 0.75 Torr | 物理や工学で用いられる圧力の単位 |
このように、ミリバールはさまざまな圧力の単位との間で簡単に換算ができ、標準大気圧が約1,000ミリバールときりのよい値になることから、特に大気圧や気象現象を扱う分野で非常に使い勝手のよい単位として広まりました。
ミリバールが広く使われるようになったのは20世紀の初めから中ごろにかけてで、世界気象機関(WMO)など国際的な機関でも長らく標準単位として採用されていました。
日本でも、戦後から長期間にわたり、気象庁やテレビ・ラジオの天気予報、新聞の天気図などで、気圧は一貫してミリバールで表示されていました。
その後、国際単位系(SI)への移行・標準化の流れの中で、気圧の単位はミリバールからヘクトパスカルへと徐々に置き換えられていきます。
ただし、数値そのものは「1ミリバール = 1ヘクトパスカル」で完全に一致しているため、単位記号だけが変わり、天気図や台風情報の具体的な数値感覚は大きく変わらない形で移行が進みました。
2.2 かつての天気予報での使われ方
ミリバールが主流だった時代の日本では、天気予報に登場する気圧の値は、ほぼ例外なく「ミリバール」で説明されていました。
テレビやラジオの気象キャスター、新聞の気象欄、学校の理科や地学の教科書まで、統一的にミリバールが用いられていたため、多くの人が「気圧 = ミリバール」という感覚で気圧配置を理解していました。
具体的には、次のような場面でミリバールが使われていました。
| 場面 | ミリバールでの表現例 | 役割・目的 |
|---|---|---|
| 天気図の等圧線 | 「1,000ミリバール」「1,020ミリバール」のように等圧線の値を表示 | 高気圧・低気圧の強さや分布を分かりやすく示す |
| 高気圧・低気圧の中心気圧 | 「強い冬型の気圧配置で、発達した低気圧の中心は980ミリバール」 | 気圧配置の特徴や天候の変化の度合いを説明する指標として利用 |
| 台風情報 | 「台風の中心気圧は940ミリバールと非常に低く、猛烈な勢力です」 | 台風の勢力を示す代表的な数値として用いられる |
| 気象庁の実況・解析 | 観測データや解析資料の気圧をミリバールで統一 | 観測網全体で同じ単位を用いることで比較・解析を容易にする |
| 航空気象・航空計器 | 高度計の気圧設定値をミリバールで表示する方式が広く使われていた | 離着陸時の安全な高度管理のため、気圧を共通の単位で取り扱う |
当時の天気予報では、「1,020ミリバールを超えると強い高気圧」「980ミリバールを下回ると発達した低気圧」など、ミリバールの値を基準とした感覚が一般に共有されていました。
このため、気圧の数字を聞いただけで、どの程度の高気圧・低気圧なのかをある程度イメージできる人も少なくありませんでした。
また、学校教育においても、地球科学や気象の単元ではミリバールが中心的な単位として扱われていました。
理科の教科書に掲載されていた日本付近の天気図では、等圧線に「1,004」「1,012」「1,020」といった値がミリバール単位で記され、その読み取り方を通じて、高気圧・低気圧の位置と天気の関係、気圧配置と風向・風速の関係などを学ぶ構成になっていました。
その後、国際単位系への移行の一環として気圧の単位はヘクトパスカルに置き換えられましたが、数値そのものはミリバール時代とほぼ同じ桁・同じ感覚で使えるため、「台風の中心気圧が950ヘクトパスカル」と聞いたときの印象は、「950ミリバール」と聞いていたころと変わらないという点が、移行を円滑にした大きな要因となりました。
3. ヘクトパスカルとはどんな単位か
ヘクトパスカル(記号:hPa)は、現在の日本の天気予報や天気図で標準的に使われている気圧を表す国際単位系(SI)に基づく単位です。
かつて使われていたミリバールとほぼ同じ大きさの単位でありながら、表記や定義を国際単位系にそろえるために採用されたという背景があります。
3.1 ヘクトパスカルの定義と成り立ち
ヘクトパスカルという名称は、「パスカル(Pa)」にSI接頭語の「ヘクト(h)」が付いたものです。
パスカルは国際単位系で定められた圧力の単位で、1パスカル(1 Pa)は「1平方メートルあたり1ニュートンの力が働くときの圧力」と定義されています。数式で書くと、1 Pa = 1 N/m² です。
「ヘクト(hecto)」は100倍を意味するSI接頭語なので、1ヘクトパスカルは次のような関係になります。
1 hPa = 100 Pa
この定義に基づいて、日常的によく使われる「1気圧」を表すと、およそ次のようになります。
1気圧 ≒ 1013 hPa
つまり、地上付近の標準的な大気の重さを表したとき、気圧は約1013ヘクトパスカルであり、日本の天気予報でも「おおむね1000ヘクトパスカル前後」という表現がよく用いられます。
ヘクトパスカルは、もともと「バール(bar)」という単位系で使われていたミリバール(mbar)と対応するように定義されており、数値としてはミリバールと同じ大きさの圧力を表せるように考えられたSI単位系での置き換えと言えます。
そのため、古い資料や本でミリバールが使われていても、現在のヘクトパスカルの感覚に置き換えて理解しやすくなっています。
ヘクトパスカルが使われるようになった背景には、世界気象機関(WMO)や各国の気象機関が、圧力の単位を国際単位系に統一しようとした流れがあります。
従来のミリバールは、厳密にはSI単位系に含まれない単位でしたが、ヘクトパスカルはSI基本単位であるパスカルを基準にしているため、物理学や工学の他の分野と整合性が取りやすくなりました。
ヘクトパスカルの位置づけをよりイメージしやすくするために、パスカルとその周辺の単位を整理すると次のようになります。
| 単位名 | 単位記号 | SI接頭語 | パスカルとの関係 | 主な利用シーン |
|---|---|---|---|---|
| パスカル | Pa | (なし) | 1 Pa | 物理学や工学での圧力計算、材料の強度など |
| ヘクトパスカル | hPa | ヘクト(10²) | 1 hPa = 100 Pa | 気象分野での気圧の表記(天気予報、天気図、台風情報など) |
| キロパスカル | kPa | キロ(10³) | 1 kPa = 1000 Pa | 工学、産業分野での圧力管理、真空装置や配管の圧力表示など |
このように、ヘクトパスカルはパスカルを基準にした一連の単位の中でも、「気象観測にちょうど使いやすい大きさの単位」として位置づけられていることが分かります。
地上の気圧が1000 hPa前後という扱いやすい数値になるため、観測値の読み取りや天気図の作成、速報性が求められるニュースでの解説に適した単位なのです。
3.2 現在の天気予報での使われ方
現在の日本では、気象庁をはじめ、テレビやラジオ、新聞、インターネットの天気予報、スマートフォンの天気アプリなど、ほぼすべての気象情報で気圧の単位はヘクトパスカルに統一されています。
ニュースや天気予報でアナウンサーが「台風の中心気圧は950ヘクトパスカル」「きょうの本州付近は1015ヘクトパスカルの高気圧に覆われています」などと説明しているのが、その代表例です。
具体的にどのような場面でヘクトパスカルが使われているのかを整理すると、次のようになります。
| 場面 | ヘクトパスカルの使われ方 | 読み取りのポイント |
|---|---|---|
| 地上の天気図 | 各地点の地上気圧をhPaで表示し、同じ気圧を結んだ「等圧線」が描かれる。 | 等圧線が込み合っている部分は気圧の変化が急で、風が強くなりやすいなど、気圧配置から天気の傾向を読み取る。 |
| 高気圧・低気圧の中心 | 中心付近の最低・最高気圧をhPaで表し、「1024 hPaの高気圧」「998 hPaの低気圧」などの形で示される。 | 一般に、周囲より気圧が高いところが高気圧、低いところが低気圧として示され、値の違いが大きいほど気圧差による風が強まりやすい。 |
| 台風情報 | 台風の「中心気圧」がhPaで示される。例:中心気圧950 hPa。 | 中心気圧が低いほど、一般に台風の勢力が強く、風が非常に強くなり、大雨をもたらしやすいと解釈される(進行速度や構造もあわせて判断)。 |
| 上空の気圧と天気図 | 高度ごとの気圧面(例:500 hPa面、850 hPa面)の天気図で、大気の流れや寒気の流入状況を解析する際に使用される。 | 500 hPaや850 hPaといった値は、上空の気圧の高さを示す基準として使われ、寒気・暖気の強さや大気の安定・不安定を判断する材料になる。 |
| 天気予報アプリ・気圧グラフ | スマートフォンや腕時計の気圧センサーが、現在地の気圧をhPa単位で計測し、グラフ表示するものが増えている。 | 短時間で気圧が大きく下がっているグラフは、低気圧や前線の接近を示すサインとして、雨の降り始めや風の強まりの目安に利用されることがある。 |
このように、ヘクトパスカルは単に数値としての気圧を表すだけでなく、高気圧・低気圧の勢力、台風の強さ、上空の寒気の状態など、さまざまな気象現象を読み解くための「共通言語」として機能している単位です。
そのため、天気予報をより深く理解したい場合、ヘクトパスカルという単位の意味や、値の違いがどのような天気の変化につながるのかを知っておくことが役に立ちます。
4. ミリバールとヘクトパスカル 単位の違いを徹底解説
「ミリバール(mb)」と「ヘクトパスカル(hPa)」は、どちらも気圧を表す単位であり、天気図や台風情報、天気予報でよく目にする基本的な物理量の表現方法です。
現在の日本の気象情報ではヘクトパスカルに統一されていますが、かつてはミリバールが一般的に使われていました。
この章では、数値としての換算関係から国際的な単位体系まで、両者の違いを丁寧に整理します。
4.1 数値としてのミリバールとヘクトパスカルの換算関係
まず押さえておきたいのは、ミリバールとヘクトパスカルは「大きさ」がまったく同じ単位であり、数値もそのまま1対1で対応するという点です。
つまり、1ミリバール(1 mb)= 1ヘクトパスカル(1 hPa)となり、数値の変換は一切不要です。
例えば、かつて「台風の中心気圧は950ミリバール」と表記されていたものは、現在では「950ヘクトパスカル」と表記されますが、物理的に意味している気圧の大きさは同一です。
この関係は、両者の定義をより基本的なSI単位であるパスカル(Pa)までさかのぼると理解しやすくなります。
- 1パスカル(1 Pa)= 1平方メートルあたり1ニュートンの力がかかるときの圧力
- 1ヘクトパスカル(1 hPa)= 100パスカル(100 Pa)
- 1バール(1 bar)= 100,000パスカル(105 Pa)
- 1ミリバール(1 mb)= 1バールの1000分の1=100パスカル(100 Pa)
このように、ミリバールもヘクトパスカルもどちらも100パスカルを1単位とする圧力の呼び方であり、定義上まったく同じ大きさを表しています。
違うのは、「バール」を基準にしているか、「パスカル」を基準にしているかという考え方だけです。
標準的な気圧でよく挙げられる「標準大気圧」も、次のように同じ数値で表記されます。
- 標準大気圧=1013.25 mb
- 標準大気圧=1013.25 hPa
- 標準大気圧=101,325 Pa
したがって、古い資料でミリバール表記を見かけても、気象庁など現代の情報で使われているヘクトパスカルと数値は完全に対応していると理解しておけば、天気図の読み方や過去データとの比較で困ることはありません。
違いを整理すると次のようになります。
| 項目 | ミリバール(mb) | ヘクトパスカル(hPa) |
|---|---|---|
| 定義の基準 | 非SI単位である「バール(bar)」を基準とした100分の1の単位 | SI単位「パスカル(Pa)」に接頭語「ヘクト(h)」を付けた単位 |
| パスカルとの関係 | 1 mb = 100 Pa | 1 hPa = 100 Pa |
| 数値の関係 | 1 mb = 1 hPa | 1 hPa = 1 mb |
| 標準大気圧の値 | 1013.25 mb | 1013.25 hPa |
| 主な使用時期 | 20世紀の気象分野で広く使用 | 現在の気象分野で標準的に使用 |
| 現在の位置づけ | 歴史的な単位として扱われ、新たな使用は推奨されない | 実務的な気象観測・天気予報の標準単位 |
この表から分かるように、ミリバールとヘクトパスカルの違いは「どの単位体系を基準とするか」という名前上・制度上の違いであり、同じ気圧をそのままの数値で表せる互換的な単位です。
したがって、「950ミリバール」と「950ヘクトパスカル」を別物として換算する必要はありません。
4.2 なぜヘクトパスカルに統一されたのか
それでは、数値的には同じであるにもかかわらず、なぜミリバールからヘクトパスカルへと表記が切り替えられていったのでしょうか。
背景には、国際単位系(SI)への移行と、気象・航空分野を中心とした世界的な標準化の流れがあります。
ミリバールは便利な実務単位として長く使われてきましたが、バール自体が国際単位系に含まれない非SI単位であることから、科学技術の世界全体で使われる単位体系との整合性に課題がありました。
一方、ヘクトパスカルはSI単位であるパスカルを基礎とし、接頭語を付けるだけで同じ大きさを表現できるため、物理学・工学・気象学といった分野を横断して扱いやすいという利点があります。
さらに、世界気象機関などの国際機関や各国の気象庁、航空関連機関が協調して、気圧単位の統一を進めたことにより、現在では気圧に関する国際的な実務単位としてヘクトパスカルを用いるのが事実上の標準となりました。
4.2.1 国際単位系SIへの移行
国際単位系(SI)は、メートルやキログラム、秒、アンペア、ケルビン、モル、カンデラを基本単位とし、それらから導かれる派生単位を体系的に定めた国際的な単位体系です。
圧力のSI単位として定められているのが「パスカル(Pa)」であり、「1 Pa = 1 N/m²」という力と面積から定義されます。
パスカルそのものは1 Paあたりの大きさが小さく、大気圧をそのままパスカルで表そうとすると「101,325 Pa」といった5桁以上の数値になってしまいます。
日常的な天気予報や天気図でこれを扱うのは煩雑なため、実務的にはより扱いやすい桁数にする必要がありました。
そこで、パスカルにSI接頭語を付けた「ヘクトパスカル(hPa)を気象分野の実務単位とすることで、SI単位系と実務上の使いやすさを両立させる」という方針が取られました。
ヘクト(h)は「100倍」を意味する接頭語であり、1 hPa = 100 Pa となるため、標準大気圧は約1013 hPaと、従来のミリバールと同じ感覚で表現できます。
このように、
- 圧力の理論的・国際的な共通基盤として「パスカル(Pa)」を採用
- 気象の実務では、桁数が扱いやすい「ヘクトパスカル(hPa)」を採用
という二段構えにすることで、学術的な一貫性と日常的な利便性を両立させつつ、非SI単位であるバールやミリバールから徐々に移行していくことが可能になりました。
この移行により、気象分野だけでなく、物理学・工学・環境科学などの他分野との間で気圧・圧力データをやり取りする際にも、単位換算がシンプルになり、国際的な研究や技術基準との整合性が高まりました。
4.2.2 世界的な標準化の動き
ヘクトパスカルへの統一には、国際的な標準化機関や各国の専門機関による合意と実務上の要請も大きく関わっています。
気象分野では、世界各地の観測データを相互に利用しながら、天気予報や気候解析を行う必要があります。そのためには、
世界中で観測された気圧データを同じ単位で記録・交換し、計算や比較を行えるようにすることが極めて重要です。
こうした背景から、世界気象機関を中心に、気圧の実務単位としてヘクトパスカルを使う方向で各国の気象機関や研究機関が足並みをそろえていきました。
これにより、次のようなメリットが得られます。
- 国や地域ごとに異なる単位表記(mb、mmHg、inHgなど)による誤解や換算ミスを防げる
- 国際的な数値予報モデルや衛星データの処理で、単位変換の手間やエラー要因を減らせる
- 国境を越えた防災情報(台風・ハリケーン・サイクロンなど)の共有を円滑にできる
また、航空分野においても、航空機の高度計の設定や飛行計画で気圧情報が重要な役割を果たします。
国際的な航空運航では、複数の国・地域の空港や航空管制機関が関わるため、気圧の単位統一は安全かつ効率的な運航のための前提条件ともいえます。
気象機関と航空関連機関が共通してヘクトパスカルを用いることで、パイロットや管制官の理解が統一され、運用上の混乱を避けることができます。
さらに、観測機器や家庭用の気圧計・多機能時計などの設計においても、使用する単位をヘクトパスカルにそろえることで、製品仕様が国際的に共通化しやすくなりました。
これにより、天気予報、航空、観測機器、学術研究といった複数の分野が「ヘクトパスカル」という共通言語で気圧を扱えるようになり、グローバルな標準として定着していったのです。
このような国際単位系への整合性と世界的な標準化の動きが組み合わさり、ミリバールは徐々に歴史的な単位としての役割にとどまり、実務の世界ではヘクトパスカルが主役となりました。
ユーザー側から見れば、「mb」と書かれていたものが「hPa」という表記に変わっただけで、数値感覚や天気図の読み方はほとんど変わらないため、スムーズな移行が可能だったと言えます。
5. 日本における単位変更の歴史 いつからヘクトパスカルになったのか
日本で気圧の単位が「ミリバール」から「ヘクトパスカル」に切り替わった背景には、国際的な標準化の流れと、日本国内での計量制度の整備があります。
この章では、かつての天気予報で当たり前だったミリバール表記が、どのような経緯をたどってヘクトパスカル表記へと移行していったのかを、日本における具体的な歴史に沿って整理していきます。
5.1 変更前の状況と移行期間
日本では長年、気象庁が作成する天気図や、テレビ・ラジオ・新聞といった天気予報の現場で、気圧の単位として「ミリバール(mb)」が使われてきました。
特に「台風の中心気圧◯◯ミリバール」「冬型の気圧配置で、等圧線が混んでいる」といった表現は、昭和期の天気予報ではおなじみの言い回しでした。
その一方で、世界的には国際単位系(SI)を基準とした単位への統一が進み、気圧についてもヘクトパスカル(hPa)を用いる方向に移行していきました。
日本もこの流れを受け、気象庁を中心に、ミリバールからヘクトパスカルへの段階的な切り替えが進められていきました。
ただし、気圧の単位が切り替わるといっても、ある日を境に突然すべてが変わったわけではありません。
実際には、次のように「準備段階」「併記・説明の徹底」「ヘクトパスカルへの事実上の一本化」というステップを踏みながら、時間をかけて移行が行われました。
| おおまかな時期 | 主な単位表記 | よく見られた場面 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ミリバールが主流だった時期 | ミリバール(mb) | 天気図、台風情報、天気予報解説 | 一般向けの天気予報ではミリバールが事実上の標準で、「ヘクトパスカル」という言葉はほとんど登場しなかった。 |
| 移行準備・併記の時期 | ミリバールとヘクトパスカルの併記、もしくは説明付きの表記 | 専門的な資料、気象庁の解説文、教科書・参考書など | 「1ミリバールは1ヘクトパスカルに等しい」という関係を前提に、慣れ親しんだ数値の感覚を保ったまま単位の名称だけを切り替えていくための説明が行われた。 |
| ヘクトパスカルが主流になった時期 | ヘクトパスカル(hPa) | テレビ・ラジオの天気予報、新聞の天気欄、インターネットの天気情報 | 「中心気圧は960ヘクトパスカル」「天気図はヘクトパスカルで表示」といった表現が定着し、ミリバールは解説や注釈で補足的に触れられる程度になった。 |
移行期には、「数字そのものは変わらないが、呼び名(単位記号)だけが変わる」という点を、繰り返し丁寧に説明することが重視されました。
例えば、台風の中心気圧についても、以前は「950ミリバール」、移行後は「950ヘクトパスカル」と表現されますが、示している気圧の大きさはまったく同じであり、過去の台風との比較もそのまま行えることが、ニュースや解説記事で何度も説明されました。
このような経緯から、日本では1990年代前半には、一般向けの気象情報の世界でもヘクトパスカルがほぼ定着し、ミリバールは歴史的な単位として認識されるようになっていきました。
ただし、当時から天気予報を見続けている世代の中には、現在でも「ミリバール」という言い方に親しみを感じている人も少なくありません。
5.2 気象庁の対応と一般への浸透
ミリバールからヘクトパスカルへの移行を実務面で主導したのは、気象業務の中心機関である気象庁です。
気象庁は、世界気象機関(WMO)などの国際的な方針や、国内の計量制度との整合性を踏まえながら、天気図や予報文、統計資料の表記方法を見直し、段階的にヘクトパスカル表記へと切り替えていきました。
具体的には、次のような形で対応が進められました。
- 内部的な観測・解析システムや、気圧データベースでの単位表記の統一
- 予報用語や天気予報文のガイドラインを整備し、「ヘクトパスカル」を標準用語とする方針の明確化
- 各種資料や広報を通じて、ミリバールからヘクトパスカルへ移行する理由やメリットを説明
- テレビ局や新聞社など、気象情報を伝えるメディアとの調整・周知
特に重要だったのは、「単位が変わっても、これまでの台風や低気圧との比較ができなくなるわけではない」という安心感を、一般の利用者にきちんと伝えることでした。
気象庁は解説文や広報資料の中で、ミリバールとヘクトパスカルの数値が一致することを繰り返し説明し、台風情報や天気図の見方が本質的には変わらないことを強調しました。
一方、ヘクトパスカル表記が生活に根づくには、気象庁だけでなく、次のような多方面での取り組みが影響しました。
- テレビ・ラジオの天気予報で、天気キャスターや気象予報士がヘクトパスカルを用いてわかりやすく解説し続けたこと
- 新聞や雑誌の記事、インターネットの天気情報サイトが、ヘクトパスカル表記を標準としたこと
- 理科の教科書や参考書、資格試験用テキストなどが、順次ヘクトパスカル表記に対応し、学校教育の中で自然と学べるようになったこと
- 家庭用のデジタル気圧計やスマートウォッチなどの機器が、表示単位としてヘクトパスカルを採用したこと
こうした流れの中で、「台風の中心気圧は◯◯ヘクトパスカル」「気圧が下がると天気が崩れやすい」といった表現が、世代を問わず当たり前のものとして受け入れられるようになり、ヘクトパスカルは日本の気象情報における標準単位として定着しました。
現在では、専門家の世界でも一般向けの場面でも、基本的にはヘクトパスカルが用いられていますが、過去の文献や古い天気図を読む際には、今なおミリバールが登場します。
そのため、日本における単位変更の歴史を理解しておくことは、昔の気象資料と現在の気象情報をスムーズに読み比べるうえでも役立ちます。
6. 日常生活で役立つ気圧の知識
「ミリバール」と「ヘクトパスカル」の違いを理解したうえで、実際に天気予報や日々の体調管理にどう生かすかを知っておくと、暮らしの質を高めることができます。
この章では、気圧の数値やグラフを日常生活の判断材料として具体的に活用する方法を整理して解説します。
6.1 天気予報の気圧情報を活用する
テレビやインターネットの天気予報、気象アプリなどでは、気圧が「ヘクトパスカル(hPa)」で表示されています。
かつての「ミリバール(mb)」と数値としては1対1で同じなので、古い資料を読むときでもそのまま読み替えることができます。
この気圧の数値や変化の傾向を知ると、天気の変化や風の強まり方をある程度見通せるようになります。
6.1.1 気圧と天気・風の関係を読み取る
地上天気図では、等圧線や「高気圧」「低気圧」の表示とともに、その中心気圧が「hPa」で書かれています。
気圧の値だけで天気のすべてが決まるわけではありませんが、一般的な傾向として、次のような読み方が役立ちます。
| 気圧の傾向(海面気圧の目安) | 天気のイメージ | 日常生活での注意点 |
|---|---|---|
| おおむね1013hPa前後 | 日本付近としては「平均的な気圧」のことが多く、安定した天気になりやすい | 洗濯や外出、屋外レジャーの計画を立てるときの基準となる気圧の目安として覚えておくと便利 |
| 1015hPa以上の高気圧が日本付近を覆う | 晴れて風が弱い日になりやすいが、季節によっては猛暑や冷え込みが強まることもある | 夏は熱中症対策、冬は放射冷却による冷え込みに注意し、朝晩の気温差を意識して服装を選ぶ |
| 1000hPa前後まで低下 | 前線や低気圧の影響を受けやすく、曇りや雨の天気になりやすい | 洗濯物を部屋干しに切り替える、雨具を持って外出するなど、早めに天候悪化に備えた行動をとる |
| 980hPa未満の低気圧・台風 | 発達した低気圧や台風で、強い風と激しい雨になるおそれがある | 窓やベランダの固定、不要不急の外出を控える、避難情報に注意するなど、防災意識を高めた行動が必要 |
上の表はあくまで一例ですが、「気圧が下がってきたら天気の崩れや風の強まりに備える」「極端に低い中心気圧の台風は危険度が高い」といった基本的な見方を身につけておくと、ニュースや天気図の情報を実生活に結びつけやすくなります。
6.1.2 ミリバール表記とヘクトパスカル表記を読み替えるコツ
古い気象資料や過去の災害記録では、今でも「mb(ミリバール)」の表記が残っていることがあります。
日常生活でそうした資料を目にしたときは、次の点を押さえておくと理解しやすくなります。
- 現在使われている「ヘクトパスカル(hPa)」と、かつて使われていた「ミリバール(mb)」は、数値として1mb=1hPaで同じ大きさである
- たとえば「台風の中心気圧 930mb」と書かれていれば、「台風の中心気圧 930hPa」と同じ意味として、そのまま読み替えてよい
- ニュースや天気予報は現在「hPa」に統一されているため、昔のミリバール表記も頭の中でhPaに置き換えてしまえば比較しやすい
このように、ミリバールとヘクトパスカルの違いを理解しておけば、昭和の台風記録や過去の天気図と、現在の天気予報を同じ物差しで比較できるようになり、長期的な気候の傾向を振り返るときにも役立ちます。
6.1.3 スマートフォンや気圧計アプリの活用
近年は、スマートフォンやスマートウォッチ、家庭用のデジタル気圧計などで、身の回りの気圧を簡単に確認できるようになりました。
多くの機器やアプリでは、気圧が「hPa」で表示されますが、ミリバールと同じ大きさなので、そのまま比較・活用できます。
- iPhoneや一部のAndroidスマートフォンには気圧センサーが搭載されており、専用アプリを使うと現在の気圧の値や、過去数時間〜数日の気圧変化のグラフを確認できる
- 登山用の腕時計やアウトドア用のデジタル気圧計では、気圧の変化から天気の変化をおおまかに予測する機能があり、急激な気圧低下を早めに察知して行動計画を見直すことができる
- 室内に設置するデジタル気圧計を使えば、自宅や職場周辺の気圧傾向を把握でき、洗濯や換気、レジャーの計画を立てる際の参考になる
これらの機器やアプリを活用すると、テレビの天気予報だけでなく、自分のいる場所の気圧変化をリアルタイムで把握しながら行動を調整することが可能になります。
特に、後述するように気圧の変化で体調が変わりやすい人にとっては、身近な「体調管理ツール」としても有用です。
6.2 気圧の変化が体に与える影響
気圧の変化は、天気だけでなく体調にも影響を及ぼすことが知られており、日本では「気象病」や「天気痛」という言葉も広く使われています。
医学的な研究でも、気圧の変化と頭痛、関節痛、めまいなどの症状との関連が報告されており、自分の体調と気圧の変化の関係を意識して観察することが、日常生活の不調対策につながります。
6.2.1 気圧の変化と体調不良の例
気圧の変化と体調との関係は人によってさまざまですが、代表的な例を整理すると次のようになります。
| 主な症状の例 | 関連しやすい気圧・天候の傾向 | 日常生活での対策のポイント |
|---|---|---|
| 頭痛、片頭痛 | 低気圧が近づくときや、気圧が短時間で下がるときに症状が出やすい人がいる | 気圧が下がり始めるタイミングをアプリなどで把握し、早めに休息をとる・明るさや音の刺激を減らすなど、自分に合った対処を準備する |
| 関節痛、古傷の痛み | 雨の前や台風接近時など、湿度の上昇とともに気圧が低下する局面で痛みが強くなる人がいる | 天気予報で低気圧や前線の接近を知ったら、体を冷やさないように保温する・無理な運動や長時間の同じ姿勢を避けるといった工夫を心がける |
| めまい、ふらつき | 気圧が大きく変動する日や、台風通過時などに症状が出やすい人がいる | 急に立ち上がらない、こまめに水分をとるなど、安全に配慮した行動を意識し、症状が強い場合は無理をせず安静にする |
| 倦怠感、眠気、気分の落ち込み | 雨や曇りの日が続き、低気圧や前線の影響を受けているときに感じやすい人がいる | 可能な範囲で日中に光を浴びる、軽いストレッチや散歩を取り入れるなど、生活リズムを大きく崩さない工夫が有効な場合がある |
上記はあくまで一般的に報告されている傾向の一例であり、気圧と体調の関係には個人差が大きい点に注意が必要です。
気になる症状が続くときは、気圧の変化だけのせいと決めつけず、必要に応じて医療機関で相談することも大切です。
6.2.2 気圧予報を使った体調管理のポイント
自分の体調が気圧の変化に影響を受けやすいと感じている場合、天気予報や気圧アプリを活用して「備える」ことが有効です。
気圧の単位がミリバールからヘクトパスカルに変わっても、数値自体は同じなので、過去の記録も含めて一貫した目安として利用できます。
- 気圧と体調の記録をつける
日々の体調と、その日の気圧(hPa)の値や変化をメモしておくと、「どの程度の気圧低下で体調が崩れやすいか」の自分なりの傾向が見つけやすくなる - 気圧が大きく変化する日のスケジュール調整
台風接近や発達した低気圧の通過など、気圧変化が大きくなりそうな日は、あらかじめ重要な予定を詰め込みすぎない、早めに睡眠時間を確保するなど、無理のない計画を立てる - 事前のセルフケアや準備
頭痛や関節痛が出やすい人は、医師と相談のうえで決めた対処法や、市販薬の使用タイミング、首・肩まわりのストレッチ、入浴などのセルフケアを「気圧が下がる前」から意識して行う - 家族や職場への共有
自分が気圧変化で体調を崩しやすいことを家族や職場の人に伝え、特に気圧が大きく動く日は配慮してもらうなど、周囲と情報を共有しておくと安心感につながる
このように、ヘクトパスカルで表示される気圧の数値やグラフを「体調のバロメーター」として活用することで、天気に左右されにくい暮らし方を目指すことができます。
気圧の単位の理解は、単なる知識にとどまらず、具体的な行動改善にも直結していきます。
7. まとめ
ミリバールとヘクトパスカルは、1ミリバール=1ヘクトパスカルで数値上は同じ気圧を表す単位ですが、国際単位系SIに合わせるため、現在はヘクトパスカルが標準として使われています。
世界気象機関などの国際的な標準化の動きを受け、日本でも気象庁が1992年から天気図や天気予報の表示をヘクトパスカルに統一し、一般にもこの表記が定着しました。
天気予報の気圧情報を理解しておくと、台風の勢力や気圧配置の把握に役立つだけでなく、気圧変化による頭痛やだるさなど体調管理の目安としても活用できます。

